5◇ 糸魚川大火に思う
昨年末に起きた新潟糸魚川の大規模火災には驚いた。強風にあおられ市街地が300mに渡って燃え続け日本海に面する建物をすべて焼き尽くし約30時間後に鎮火した。「這うように炎が広がった」との声はテレビに映し出された煙の動きの中で何が起きていたかをもの語っていた。火災がここまで広がった要因として風にあおられ飛び散った火の粉と窓や屋根を突き抜ける輻射熱があげられている。火元は被災地の南端にあった中華料理店、店主が鍋に火を付けたまま外出してしまい出火している。原因は人間の基本的油断であるとともに天候、地形、市街地の形状などあらゆる条件が重なった複合的要因ではないかと感じている。
さかのぼること40年前、建設コンサルタント入社当時、横浜市の避難路計画に携わったことがある。避難路を設定するにあたって沿道の不燃化つまり中高層のコンクリート等の建物があるか、また植樹帯などオープンスペースがあるかなどを条件としたと記憶している。延焼を防ぐ方法としての不燃化建築物や植樹帯の配置だけでは防げないことを今回の火災は教えてくれている。
近年の認知症による交通事故が話題に上がり道路交通法が改正された。認知症は40代で発症することもある記憶や思考、行動に問題をきたす病で、65歳以上の7人に1人、軽度の人を含めると4人に1人が患者か予備軍と言われているが、加齢とともに記憶力や注意力が低下していくことは誰にでも起こり得る。家事をしているときに電話が掛かってきてそのまま出かけてしまい、コンロに火がついたままになる事例が起きているそうだ。認知症だけでは片付けられない人間のちょっとした迂闊さや隙も、時に大事に至ってしまう。私は毎日2,3回コーヒーを入れる。そのたびにガスコンロで沸かしているが、火を点けたときはその場から離れないことにした。
先日、とある地域の消火栓が開かないところがテレビに映し出された。ここ関町北2丁目、関町南4丁目には合計80もの消火栓がある。私たちの防災会ではこれらの消火栓を使ってスタンドパイプによるまちかど消火訓練を実施している。蓋の隙間がゴミで目詰まりし通過する車で硬く押さえられ開かない消火栓もあったが、訓練を重ねる中で開けるコツも分かった。自分自身の油断を排するとともに火災における最も大事な「初期消火」の対応が可能となるスタンドパイプや消火器を使った訓練をこれからも地域の方々と進めたいと思っている。
2017年3月 わかば公園防災会 会長 野口 渉